産業用ロボットの定義とは?一般的な定義について解説
「産業用ロボットって具体的にどう定義されているの?」「協働ロボットやサービスロボットとの違いは何だろう?」「提案資料に正確な定義を書きたいけど、どの情報が正しいのか分からない...」
そう思う方もいるかもしれません。
実は、産業用ロボットにはISO規格に基づいた明確な定義があり、用途・構造・安全規格の3つの観点から他のロボットと区別することができるのです。
この記事では、産業用ロボットの一般的な定義や特徴、関連規格、そして他のロボットとの違いについて詳しく解説します。
産業用ロボットの定義とは
産業用ロボットは、製造業の現場で広く活用されている自動化機器ですが、その定義は国際規格や各国の工業規格によって明確に定められています。
ここでは産業用ロボットの定義について解説します。
ISO規格による産業用ロボットの定義
ISO 8373は、ロボット及びロボティックデバイスに関する国際標準規格であり、産業用ロボットを「3軸以上の自由度を持ち、自動制御され、プログラム可能で、多目的なマニピュレータであり、固定または移動可能で、産業オートメーション用途に使用されるもの」と定義しています。
この定義は世界中で広く採用されており、製造業における自動化設備の分類基準として機能しています。特に3軸以上という要件と、プログラム可能性が重要な区別点となっています。
出典:日本工業規格 JIS
日本工業規格(JIS)における定義
日本工業規格JIS B 0134では、産業用ロボットを「自動制御によるマニピュレーション機能又は移動機能をもち、各種の作業をプログラムによって実行でき、産業に使用される機械」と定義しています。この定義はISO規格に準拠しながらも、日本の製造現場の実情に即した表現となっています。
JIS規格では、マニピュレーション機能と移動機能の両方を含む点が特徴的であり、固定式ロボットだけでなく移動型ロボットも産業用ロボットの範囲に含まれることを明確にしています。
産業用ロボットの基本的な3つの要件
産業用ロボットとして認められるためには、以下の3つの基本要件を満たす必要があります。
- ● 自動制御機能:人間の直接的な操作なしに動作できること
- ● プログラム可能性:作業内容を変更できる柔軟性を持つこと
- ● 産業用途での使用:製造、組立、検査、搬送などの生産活動に関わる作業を行うこと
これら3つの要件を満たすことで、単純な自動機械や専用機とは区別された「産業用ロボット」として分類されます。特にプログラム可能性は、多品種少量生産に対応できる重要な特性となっています。
産業用ロボットの特徴と構成要素
産業用ロボットは、複数の技術要素が組み合わさって構成されている高度な自動化機器です。その性能を最大限に発揮するためには、自動制御機能、機械的な構造、そしてプログラムによる柔軟な動作制御が不可欠となります。
ここでは産業用ロボットの特徴と構成要素について解説します。
自動制御機能の役割
自動制御機能は、産業用ロボットの中核を担う技術であり、センサーからの情報を基に動作を自律的に調整する仕組みです。この機能により、ロボットは作業環境の変化に応じて位置や速度、力加減を最適化できます。
例えば、溶接作業では温度センサーの情報を基に出力を調整し、組立作業では力覚センサーにより部品の挿入圧力を制御します。制御装置にはPLCやロボットコントローラが使用され、リアルタイムで複雑な演算処理を行うことで、高精度な動作を実現しています。
マニピュレータとエンドエフェクタの構造
マニピュレータは産業用ロボットの「腕」に相当する機械構造であり、複数の関節とリンクで構成されています。各関節にはモーターや減速機が組み込まれ、精密な位置制御が可能です。
一方、エンドエフェクタは作業の目的に応じて交換可能な「手」の部分で、グリッパー、溶接トーチ、吸着パッドなど多様な種類があります。この組み合わせにより、同じマニピュレータでも異なる作業に対応できる汎用性が生まれます。エンドエフェクタの選択と設計が、ロボットシステム全体の作業効率を大きく左右します。
プログラム可能性と柔軟性
産業用ロボットの最大の特徴は、プログラムによって動作を変更できる柔軟性があります。ティーチングペンダントやオフラインプログラミングソフトウェアを使用することで、作業者は複雑な動作パターンの設定が可能です。
製品の仕様変更や生産ラインの組み替えが発生しても、プログラムを書き換えるだけで対応可能なため、専用機と比較して投資効率が高くなります。近年では、AIやビジョンシステムとの連携により、プログラムなしで自律的に学習するロボットも登場しており、さらなる柔軟性の向上が期待されています。
産業用ロボットに関する規格と基準
産業用ロボットの設計、製造、使用においては、安全性と互換性を確保するために国際規格や各国の基準が定められています。これらの規格は、ロボットメーカーだけでなく、導入を検討する企業にとっても重要な判断材料となります。
ここでは産業用ロボットに関する規格と基準について解説します。
ISO 8373の重要性と内容
ISO 8373は、ロボット及びロボティックデバイスに関する用語と定義を定めた国際規格であり、産業用ロボットの分類や特性を明確にしています。この規格では、ロボットの種類、座標系、性能特性、軸の定義などが詳細に規定されており、世界中のロボットメーカーや研究機関が共通の言語として使用しています。
ISO 8373に準拠することで、技術文書や仕様書における表現の統一が図られ、国際的な取引や技術交流が円滑になります。また、この規格は技術の進歩に合わせて定期的に改訂されており、最新のロボット技術を反映しています。
安全規格ISO 10218とは
ISO 10218は、産業用ロボットの安全要求事項を定めた国際規格であり、Part 1(ロボット本体)とPart 2(ロボットシステムおよびインテグレーション)の2部構成となっています。この規格では、ロボットの設計段階から使用段階まで、リスクアセスメントに基づいた安全対策が求められます。
具体的には、安全柵の設置、緊急停止装置の配置、協働運転時の速度制限などが規定されています。日本ではこの規格に基づいたJIS B 8433が制定されており、労働安全衛生法における技術基準としても参照されています。安全規格への適合は、作業者の安全確保と企業の法的責任を果たすために必須です。
CEマーキングと国際認証
CEマーキングは、欧州経済領域で製品を販売する際に必要な適合性表示であり、産業用ロボットも機械指令や低電圧指令などの要求事項を満たす必要があります。このマーキングを取得するためには、ISO 10218などの整合規格に適合し、技術文書の整備やリスクアセスメントの実施が求められます。
また、北米市場ではUL認証やCSA認証、アジア市場では各国独自の認証が必要となる場合があります。グローバルに事業展開するロボットメーカーは、これら複数の認証を取得することで、世界中の市場への製品供給が可能です。導入企業側も、認証取得済みの製品を選ぶことでコンプライアンスリスクを低減できます。
産業用ロボットと他のロボットとの違い
産業用ロボットは、その定義や用途において他の種類のロボットと明確に区別されています。近年ではロボット技術の多様化により、協働ロボット、サービスロボット、AGVなど様々なロボットが登場していますが、それぞれ設計思想や安全規格、適用範囲が異なります。
ここでは産業用ロボットと他のロボットとの違いについて解説します。
協働ロボット(コボット)との違い
協働ロボットは、安全柵なしで人間と同じ作業空間で作業できるように設計されたロボットであり、ISO 10218-1およびISO/TS 15066で定義されています。産業用ロボットが高速・高出力で安全柵内での作業を前提とするのに対し、協働ロボットは力制限機能や接触検知センサーを備え、人との接触時に自動停止します。
そのため、協働ロボットは速度や出力が制限される一方、柔軟な配置が可能で小規模な作業に適しています。広義には協働ロボットも産業用ロボットの一種ですが、安全要件と運用方法が大きく異なるため、区別して扱われることが一般的です。
サービスロボットとの違い
サービスロボットは、ISO 8373において「産業オートメーション以外の用途で、人間や機器に有用なサービスを提供するロボット」と定義されています。医療、介護、清掃、警備、接客などの分野で使用され、産業用ロボットとは用途が根本的に異なります。産業用ロボットが製造工程における生産性向上を目的とするのに対し、サービスロボットは人々の生活の質の向上や業務支援を目的としています。
また、サービスロボットは不特定多数の人との接触を想定するため、安全規格もISO 13482など別の基準が適用されます。動作環境も、産業用ロボットが管理された工場内であるのに対し、サービスロボットは一般環境での使用を前提としています。
AGV(無人搬送車)との違い
AGV(Automated Guided Vehicle)は、工場や倉庫内で自律的に物品を搬送する無人車両であり、産業用ロボットとは機能と構造が異なります。産業用ロボットがマニピュレータによる作業を主目的とするのに対し、AGVは移動と搬送に特化しています。
ただし、近年ではAGVにロボットアームを搭載した複合型システムも登場しており、境界が曖昧になりつつあります。制御方式も、産業用ロボットが固定位置での精密な動作制御を行うのに対し、AGVは自律走行や経路計画が中心です。ISO 3691-4などの独自の安全規格が適用されるため、導入時には産業用ロボットとは別の検討が必要です。




