キービジュアル

コラム

記事

加工ロボットの活用で企業が効率化を進める際に発生する課題などについて

製造業において人手不足が深刻化する中、加工ロボットの導入による生産性向上への期待が高まっています。溶接や切削、研磨といった加工工程を自動化することで、品質の安定化や生産効率の向上が見込めます。しかし、ロボット導入には初期投資や人材育成など様々な課題も存在します。本記事では、加工ロボット導入によるメリットと課題、そしてその解決策について詳しく解説します。

加工ロボットとは?製造現場で活躍するロボットの種類

加工ロボットとは、製造現場において溶接、切削、研磨、塗装などの加工作業を自動で行う産業用ロボットの総称です。経済産業省の定義によれば、産業用ロボットはセンサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する知能化した機械システムとされています。
製造現場で使用される加工ロボットには、主に以下のような種類があります。垂直多関節ロボットは人間の腕のような構造を持ち、自由度が高く複雑な作業に対応できます。溶接ロボットや塗装ロボットに多く採用されています。スカラロボットは水平方向の動作に優れ、組立作業や検査工程で活躍します。また、近年注目を集める協働ロボットは、リスクアセスメントと安全機能の条件が満たされる範囲で、安全柵を最小化しつつ人と同じ空間で作業できる場合がありますので、中小企業でも導入しやすいという特徴があります。

加工ロボット導入による5つのメリット

生産性の向上と品質の安定化

加工ロボットの最大のメリットは、生産性の向上と品質の安定化です。ロボットはプログラム通りに一定のスピードで作業を行うため、人間による作業と比較してムラがなく、常に安定した品質を維持できます。特に溶接作業においては、熟練工でも体調やメンタルによって品質にばらつきが出ることがありますが、ロボットではそのような問題が発生しません。また、24時間365日の連続稼働も可能なため、工場の稼働率を大幅に向上させることができます。

人手不足問題の解消と省人化

日本では少子高齢化により労働人口が減少しており、製造業における人手不足は深刻な課題となっています。加工ロボットを導入することで、従来人間が行っていた作業を自動化し、必要な作業員数を削減できます。これにより人手不足の解消につながるとともに、作業負荷が軽減されることで人員募集も容易になります。熟練工の技術に頼ることなく高品質な加工が可能になるため、技術継承の問題も軽減されます。

労働環境の改善と安全性の向上

製造現場には危険を伴う作業が多く存在します。例えば溶接作業では、高温にさらされるだけでなく、溶接ヒュームと呼ばれる人体に有害な金属酸化物が発生します。長期間の作業はじん肺などの健康被害を引き起こすリスクがあります。加工ロボットがこれらの危険な作業を代替することで、作業員の安全を確保し、快適な作業環境を実現できます。これは従業員満足度の向上や離職率の低下にもつながります。

長期的な製造コストの削減

初期投資は必要となりますが、長期的に見れば製造コストの削減につながります。作業に従事する人数を減らすことで人件費を削減できるほか、高精度な加工により材料の歩留まりも向上します。また、ヒューマンエラーによる不良品の発生を抑制できるため、品質管理コストの削減にも寄与します。ロボットによる自動化が進めば、単純作業は人間以上の速度で実行できるため、全体的な生産効率が向上します。

熟練技術のデジタル化と継承

製造業では熟練工の高齢化により技術継承が課題となっています。加工ロボットに熟練工の技術をプログラムとして記録することで、その技術を永続的に保存・活用できます。近年ではAI技術の進歩により、熟練工の微妙な動作や判断を機械学習で再現する取り組みも進んでいます。これにより、ベテラン職人の引退後も高品質な製品を安定して生産し続けることが可能になります。

加工ロボット導入時に企業が直面する主な課題


高額な初期投資コスト

加工ロボット導入における最大の障壁は初期投資コストです。ロボット本体の購入費用に加えて、周辺設備の費用、設置費用、システムインテグレーション費用などが必要となります。溶接ロボットシステムの場合、一般的に1,500万円から2,000万円程度の投資が必要とされています。さらに、ロボットを設置するための工場レイアウトの変更や安全柵の設置など、付帯工事も発生する可能性があります。中小企業にとってはこの初期投資が大きな負担となることが多いです。

ロボット操作・保守人材の確保と育成

加工ロボットを導入しても、それを運用できる人材がいなければ効果を発揮できません。ロボットの操作にはティーチングと呼ばれるプログラミング作業が必要であり、専門的な知識と技術が求められます。また、導入後のメンテナンスや故障対応、プログラムの修正なども必要となります。自社でこうした人材を確保するか、外部の業者に委託するかの判断が必要です。近年はインターフェースの進化により直感的な操作が可能になってきていますが、依然として人材育成は重要な課題です。

多品種少量生産への対応困難

産業用ロボットはティーチングで作成された動き通りの決められた動作しかできないため、大量生産には向いていますが、多品種少量生産には課題があります。生産するワークが変わるたびに段取り替え作業が発生し、ワークごとに専用の治具を製作する必要がある場合もあります。この点では手作業の方が柔軟性に優れているといえます。熟練工が行うような製品ごとの微調整や、異なる状況への適応は機械で再現することが難しいのが現状です。

既存の生産ラインとの統合

加工ロボットの導入は単純に一部の作業工程を自動化して終わりというものではありません。既存の生産ラインやシステムとの連携、工場レイアウトの見直し、動線への影響など、製造工程全体に関わる検討が必要です。特に工場が人の動きに合わせて設計されている場合、ロボット導入に伴う設備の改造コストも無視できません。導入後の「こんなはずではなかった」を避けるためにも、多角的な視点からの事前検討が欠かせません。

継続的なメンテナンスとランニングコスト

加工ロボットは導入して終わりではなく、継続的なメンテナンスが必要です。定期的な点検、消耗部品の交換、ソフトウェアのバージョンアップ、環境変化への対応など、様々な保守作業が発生します。これらに対応するための人材を確保するか、外部業者との保守契約を結ぶ必要があります。また、システムエラーが発生した場合は生産ラインが停止するリスクもあるため、迅速な対応体制を構築しておくことが重要です。

加工ロボット導入課題を解決するための具体的な方法

補助金・助成金制度の活用

初期投資の負担を軽減するために、国や自治体の補助金制度を積極的に活用しましょう。中小企業省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業がIoTやロボット等の省力化設備を導入する際に利用できます。ものづくり補助金は革新的なサービス開発や生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援し、ロボット導入も対象となります。これらの補助金を活用すれば、投資金額の2分の1から3分の2程度を抑えることも可能です。申請には事業計画の策定が必要ですが、自社の課題を整理する良い機会にもなります。

協働ロボットの導入検討

従来の産業用ロボットに比べて導入ハードルが低い協働ロボットの活用を検討しましょう。協働ロボットは基本的に安全柵を必要とせず、人と同じ空間で作業できます。コンパクトで軽量なため省スペースに設置でき、生産状況に合わせて移動することも可能です。複雑な作業や判断力を必要とする作業は人が行い、単純作業や繰り返し作業、危険な作業はロボットに任せるという分担が実現できます。産業用ロボットと協働ロボットの強みを組み合わせることで、より効率的な生産体制を構築できます。

段階的な導入アプローチ

全工程を一度に自動化するのではなく、段階的にロボットを導入していく方法が効果的です。まずは比較的単純で自動化しやすい工程から始め、成功体験を積みながら徐々に範囲を広げていきます。例えば、TIG溶接において直線部分はロボットに任せ、曲線などの複雑な箇所は熟練工が担当するという分担も有効です。昼間は熟練者による難加工、夜間・休日はロボットによる量産型ワークの連続運転という使い分けで、熟練者が付加価値の高い加工に専念できる環境を作ることもできます。

専門家・システムインテグレーターの活用

ロボット導入の経験がない企業は、ロボットメーカーや専門商社、システムインテグレーター(SIer)に相談することをお勧めします。自社の課題や目的を明確に伝えることで、最適なソリューションの提案を受けられます。中小機構などの公的機関では、ロボット・IoT・デジタル技術の導入をサポートする無料の専門家派遣制度も提供しています。また、ロボット専門の展示会(国際ロボット展やロボットテクノロジージャパンなど)に足を運ぶことで、最新技術の情報収集や自社に適した機種の発見につながります。

計画的な人材育成体制の構築

ロボット導入と並行して、操作・保守を担う人材の育成を計画的に進めましょう。近年のロボットはインターフェースが進化しており、1日の操作講習でプログラム修正ができるようになるケースもあります。ロボットメーカーが提供する動画マニュアルなども活用しながら、社内に専任者を育成していくことが重要です。また、人材開発支援助成金などの制度を活用すれば、訓練経費の一部を助成金でカバーすることも可能です。プログラミング環境を整備することは、若い世代の人材確保にもプラスに働きます。

代表的な加工ロボットの種類と活用シーン

溶接ロボット

溶接ロボットは加工ロボットの中でも最も普及している種類の一つです。アーク溶接、スポット溶接、レーザー溶接など様々な溶接工法に対応しています。自動車産業をはじめ、建設機械、造船、電機など幅広い分野で活用されています。溶接ロボットは高度な波形制御により、手作業では困難な精密溶接も実現可能です。曲面への溶接対応や安定した品質レベル、作業環境への影響低減など多くのメリットがあります。

切削加工ロボット

切削加工においてもロボットの活用が進んでいます。従来はマシニングセンターなどの工作機械が主流でしたが、ロボットによる切削加工は設備コストを抑えながら柔軟な加工が可能です。特に大型ワークの加工や、溶接とピック&プレース、検査など複数の工程を1台のロボットで行いたい場合に有効です。CAD/CAMソフトで作成したプログラムをロボットに転送することで、複雑な形状加工にも対応できます。

研磨・バリ取りロボット

研磨やバリ取りは従来、熟練工の感覚に頼る部分が大きい作業でした。しかし、力覚センサーを搭載したロボットの登場により、自動化が進んでいます。粗削り、面取り、バフ磨き、ビード除去、鏡面仕上げなど、様々な研磨作業に対応可能です。作業者への粉塵曝露を防ぎ、安全で快適な作業環境を実現できることも大きなメリットです。品質の均一化と生産性向上を同時に達成できます。

加工ロボット導入を成功させるための重要ポイント

加工ロボットの導入を成功させるためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。まず、導入目的を明確にすることが大切です。人手不足の解消、生産効率の向上、品質の安定化、危険作業の代替など、何を達成したいのかを具体化しましょう。目的が明確であればあるほど、最適なロボットシステムの選定につながります。
次に、投資対効果の試算を行いましょう。ロボット導入による省人化効果、生産性向上効果、品質向上効果などを数値化し、初期投資やランニングコストと比較します。一般的に、ロボットシステムの投資回収期間は3年から5年程度とされています。補助金を活用すれば、この期間を短縮することも可能です。また、導入後のサポート体制についても事前に確認しておきましょう。メンテナンスや技術的なサポートが受けられるパートナー企業との関係構築が重要です。

まとめ

加工ロボットの導入は、人手不足が深刻化する製造業において有効な解決策の一つです。生産性の向上、品質の安定化、労働環境の改善など多くのメリットがある一方で、初期投資コストや人材確保、多品種少量生産への対応といった課題も存在します。しかし、補助金制度の活用、協働ロボットの検討、段階的な導入アプローチ、専門家の活用、計画的な人材育成といった方法により、これらの課題は克服可能です。
ロボット導入を成功させるためには、まず自社の課題を明確にし、何を実現したいのかを具体化することが重要です。「この工程を自動化したい」という明確なイメージがあれば、ロボット商社やSIerからの提案もより具体的なものになります。製造業のDXが進む中、加工ロボットの活用は企業の競争力維持・強化に不可欠な要素となっています。本記事が、皆様のロボット導入検討の一助となれば幸いです。

©2024 株式会社足利技研